ゆきちゃんって、弟のお嫁さんなんですけどね。「弟のお嫁さん・奥さん」って呼び方だと遠く感じちゃうので、もうここでもゆきちゃんって呼ぶことにする。
ゆきちゃんって、すごく透明感があって純粋な人で。
はじめて会ったときも「あ、いいな」と感じる人だった。
「うちの家族と会うの緊張してるみたい」と聞いていたけど、そんなの全然感じないくらい自然な人だった。
家族も私も「13〜4回会ったってベイベー!」ぐらい人見知りなので(高橋優くんの『人見知りベイベー』て曲の歌詞(笑))その後もゆきちゃんと連絡取り合ったり遊びに行ったりしたわけじゃない。だからまだまだお互い知らないもの同士だと思う。
そんなゆきちゃんと弟は、ふたりとも「結婚式はやらなくていい」という考えだったそうで、去年10月、式は挙げずにウェディングフォトだけ撮った。私も結婚式はやりたくない人なので、ゆきちゃんの気持ちがなんとなくわかる気がした。両家の家族でウェディングフォトの現場を見に行った。
ああ、ふたりの結婚式のようなものなんだ。
ふたりにお祝いの気持ちを伝えたいな、「おめでとう」を伝えたいな。
そう思ったので、お花を贈ることにした。
この気持ちを伝えるのに何がいいかと考えたら「お花がいい」と思ったから。
でも人に贈り物をするのに慣れていないので、すごく気を揉んだ。
向こうのご家族もお花を持って来てるかも。ウェディングフォトの現場にもたくさんお花があって、最後それを持って帰るかも。邪魔かも。いらないかも。……
手渡すそのときまで気を揉んだ。
でも、心からの気持ちだから、と思って渡した。
渡すときも全然うまく喋れなかった。
その日の夜、弟から連絡があった。
ゆきちゃんがすごく喜んでくれたそうだ。
「涙出るくらい嬉しかったって
お花って気持ち伝わるって
本当にありがとうって」
えっ…と思った。
衝撃を受けたような、びっくりしたような気持ちになった。
なんだかこっちが泣きそうになった。
伝わるんだ、気持ちって。
知らなかった。すごいことだな。
同時に、ゆきちゃんがこんなにまっすぐに気持ちを受け止めてくれて、感動した。なんて綺麗な、純粋な人だろう。私まで花束を渡されたような、そんな気持ちになった。
このことは私にとってすごく胸打つ経験だった。
「気持ち」って
目に見えない。
幼い頃から人の顔色を伺い、人の気持ちを瞬時に読み取ろうとしてしまう自分。
30過ぎてからやっと、
人の気持ちなんて究極のところ、わからない。1ミリもわからない。「人の気持ちを考える」なんて愚かだ、まったく必要のないことだ。私は「自分の気持ち」だけをいつも見て、「自分の気持ち」だけをまっすぐに人に伝えながら生きていさえすればいいんだ、
そう思えるようになってきた。
そんな、目に見えない「気持ち」。
知りようのない誰かの「気持ち」。
表現しようがないと思える自分の「気持ち」。
ゆきちゃんはそんな「気持ち」が、伝わるんだと教えてくれた。
今日、ゆきちゃんから内祝いが届いた。
この前、あきちゃんの誕生祝いを渡したからだ。
開けた瞬間、声が出てしまった。
私が撮った可愛いあきちゃんの写真。
ゆきちゃんが撮ってくれた、この前みんなで会ったときの写真。
弟とあきちゃんの写真。
そんな写真に、さりげないメッセージが添えてあった。
クリスマス仕様の箱に入ったお菓子も、とってもかわいい。
ゆきちゃんの気持ちが伝わってきた。
嬉しい気持ちでいっぱいになった。